「もっと上を見て」
発表会の作品で、先生からそう注意されることがあります。
言われていることは分かります。
でも、以前の私は、
「上を見て」と言われたら、ただ上を向いていました。
正直なところ、どうやって上を向いているのか、自分でもよく分かっていなかったのだと思います。
形としては上を向いている。
でも、身体の中で何が起きているのかは分からない。
そんな感じでした。
そして今でも、少し忘れると下を向いてしまいます。
発表会の作品でも、先生から「もっと上を見て」と注意されます。
アレクサンダーテクニークを学んでいるから、以前よりは「上を見る」ということを身体で感じられるようになってきました。
それでも、長年の習慣は簡単には変わりません。
そんな私が最近、もう一つ面白いことに気づきました。
口の中の力が抜けると、頭や首が楽になる。
そこから私は、「上を見る」という動作について、もう一度考えるようになりました。
「上を向いて」と言われても、どうすればいいの?
バレエでは、
「もっと上を見て」
「胸で上を見て」
と言われることがあります。
発表会の作品なら、なおさらです。
踊りの振りだけではなく、顔の向きや視線も作品の一部になります。
客席を見る。
遠くを見る。
上を見る。
それによって、踊りの印象も変わります。
だから、「上を見る」ことは大切なのでしょう。
でも、大人になってからバレエを踊っている私にとって、
「上を見る」という言葉を、身体でどう実行するのか。
これは意外と難しいことでした。
首を反らす?
顎を上げる?
胸を持ち上げる?
背中を反らす?
それとも、まず目線を変える?
以前の私は、そこまで考えていませんでした。
先生に言われたから上を向く。
それだけだったのだと思います。
昔の私は、「上を見る」ということがよく分かっていなかった
以前の自分を振り返っても、正直、どうやって上を向いていたのか、あまり覚えていません。
「上を向いて」と言われたら、向いていた。
でも、それは身体の中から生まれた動きというより、形を作っていただけだったのかもしれません。
「これで合っているのかな?」
そんな感覚すら、あまりなかったように思います。
今でも、アレクサンダーテクニークを学んでいるから「なんとなく分かっているつもり」ではあります。
それでも、長年の習慣は簡単には取れません。
忘れると、すぐに下を向いてしまう。
発表会の作品でも、今でも先生から注意されます。
だから私は、
「分かったから、もうできる」
とは思っていません。
身体で分かることと、それが新しい習慣になることは、別なのだと思います。
アレクサンダーテクニークを学んで、「上を見る」が少し変わった
アレクサンダーテクニークを学ぶようになって、私の中で少しずつ変わってきたことがあります。
「上を向く」ときに、首を動かそうとするのではなくなってきたことです。
私の場合は、
まず目線が上がる。
すると、その目線にリードされるように頭がついていく。
そして、頚椎が上のほうから順に向いていく。
そんな感覚があります。
「首を反らして上を見る」というより、
目線から始まって、頭がついてきて、首も動いていく。

もちろん、いつでも完璧にできるわけではありません。
忘れると、また下を向いています。
だから、今でも練習中です。
アレクサンダーテクニークでは、頭・首・背中の関係や、習慣的な緊張に気づくことが大切なテーマの一つとされています。身体を部分ごとに固めるのではなく、全体の協調を見るという考え方です。
私自身も、そうした学びの中で、「上を見る」という動作を少しずつ違う目で感じるようになりました。
バレエダンサーは、どうしてあんなにきれいに上を向けるの?
ここで、ふと疑問が出てきました。
バレエダンサーの舞台写真や決めポーズを見ると、顔をきれいに上に向けていることがあります。
視線が高く、身体全体が大きく見える。
とても美しい姿です。
では、
あの「上を向く」と、私が苦しく感じていた「首を反らす」は同じなのでしょうか?
調べてみると、そう単純ではないことが分かりました。
ダンサーのアラベスクを調べた研究では、脊柱は一つの場所だけが動くのではなく、骨盤から腰椎、胸椎まで複数の部分が協調して動いていました。
特にアラベスクでは、脊柱全体の動きの大部分が胸椎で起きていたことが報告されています。
つまり、外から見ると、
「顔が上を向いている」
ように見えても、
「首だけを後ろに反らしている」
とは限らないのです。
これは私にとって、ちょっとした発見でした。
「首を反らさない」と「上を向かない」は違う
私は、首の後ろが潰れるような感覚に、少し怖さがあります。
首の後ろが詰まって、そこから先へ動けなくなるような感じ。
身体が固まってしまいそうな感じです。
だから、
「上を向く=首を後ろに反らす」
と考えてしまうと、私にとっては怖い動きになってしまいます。
ダンスに関する医学文献でも、ダンサーの頸部の問題が報告されています。たとえば、ダンス中の頸椎の過伸展と回旋を繰り返したことによる頸部神経根症の症例報告があります。
また、ダンサーの機械的な首の痛みに対して、頸椎だけでなく胸椎を含めて評価・治療した症例も報告されています。
もちろん、だからといって、
「バレエでは上を向いてはいけない」
ということではありません。
そうではなく、
上を向くことと、首だけを強く反らすことは同じではない。
ということなのだと思います。
そして最近、私は「口の中」の力に気づいた
ここからは、私自身の最近の小さな発見です。
あるとき、
口の中の力が抜けると、頭や首が楽になる
ことに気づきました。
私の場合、舌は根元に引き込まれる感じではなく、ふっくらしている感じです。
顎もゆるんでいます。
そうすると、仰向けになって頭の下に枕があるとき、
頭が枕の上で、よい意味で動ける。
そんな感じがします。
頭を固めて置いているのではなく、
「ここに置いてあるけれど、動ける」
という感じです。

これは、私にとって意外な発見でした。
私は首が苦しいと、
「首を楽にしなければ」
と思ってしまいます。
でも最近は、
首そのものをどうにかしようとするのではなく、身体のほかの場所に余計な力が入っていないか
を見るようになりました。
その一つが、私の場合は口の中でした。
これは私自身の身体で感じたことなので、誰にでも同じことが起こるとは思っていません。
でも、自分の身体を観察してみるきっかけにはなるかもしれません。
「上を見る」を、首だけの仕事にしない
ここまで考えてみると、
「もっと上を見て」
という先生の言葉も、以前とは少し違って聞こえます。
以前の私は、
上を見るために、どこかを動かさなければいけない
と思っていたのかもしれません。
でも今は、
目線が上がる。
頭がついていく。
頚椎が動く。
胸や背中も含めて身体が動いていく。
その中で、口や顎に余計な力が入っていないかも感じてみる。
そんなふうに、
「上を見る」という一つの動作を、身体全体の出来事として感じてみる
ようになりました。
「首をどうにかしなければ」と思うほど、首に力が入ってしまう。
だからこそ、首だけを見るのではなく、身体全体のつながりを感じてみる。
私にとっては、そんな見方が少しずつできるようになってきました。
次のレッスンで、「上を見る」を少し観察してみる
もしレッスンで、
「もっと上を見て」
と言われたら。
すぐに首を反らすのではなく、一度だけ自分の身体を感じてみる。
目線はどう動いた?
頭はどうついてきた?
首の後ろは詰まっていない?
顎は固まっていない?
口の中はどうなっている?
胸や背中はどう感じている?
そんなふうに、少し観察してみるのも面白いかもしれません。
もちろん、これが誰にでも当てはまる正解というわけではありません。
私自身もまだ試している途中です。
痛みやしびれなどがある場合は、無理に動かしたり、自己流で解決しようとしたりせず、医療専門家に相談することも大切です。
「分かった」から「できる」までは、まだ途中
アレクサンダーテクニークを学んで、
「上を見る」ということが、以前より少し分かるようになりました。
でも、忘れます。
気がつけば下を向いています。
発表会の作品でも、先生に注意されます。
だから今でも練習中です。
でも、以前と一つ違うのは、
「もっと上を見て」と言われたときに、自分の身体の中を少し探せるようになったこと。
以前は、
「上を向かなきゃ」
だった。
今は、
「私は今、どうやって上を見ようとしているんだろう?」
と、一瞬考えられる。
この違いは、私にとっては小さいようで大きな変化です。
「分かった」ことが、すぐ「できる」ようになるわけではない。
長年の習慣は、何度も戻ってきます。
だからこそ、また気づいて、また試してみる。
それも、大人になってからバレエを続ける面白さなのかもしれません。
「もっと上を見て」と言われたとき、以前の私は、ただ顔を上げていました。
今は、目線から始まって、頭がついていき、身体全体がどう動くのかを少しずつ感じています。
まだ、先生に注意されます。
それでも、自分の身体で「上を見る」を探せるようになってきた。
そして最近は、口の中の小さな力みにも気づくようになりました。
上を見ることは、首を頑張ることではないのかもしれません。
私もまだ、その答えを身体で探している途中です。
読んでいただき、ありがとうございました。

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