バレエのレッスンで、先生から一度は言われたことがある言葉ではないでしょうか。
私も、何度も言われてきました。
でも、正直に言うと――
「力を抜いて」と言われても、何をすればいいのか分かりませんでした。
肩の力を抜けばいいのかな。
それとも、脚?
お腹?
それとも全身?
当時の私は、よく分からないまま、とにかく身体をだら~んとさせていたように思います。
ところが、そうすると身体は楽になるどころか、
軸がなくなる。
姿勢が悪くなる。
身体が重くなる。
「力を抜いたのに、どうしてこんなに踊りにくいんだろう?」
そんな疑問が残りました。
今振り返ると、私は長い間、「力を抜く」という言葉を少し違う意味で受け取っていたのかもしれません。

若い頃の私は、バレエで「引き上げる」といえば、お腹を引き上げることだと思っていました。
実際に、お腹を頑張って引き上げて踊っていました。
一方で、先生から「力を抜いて」と言われると、今度は全身をだらんとさせてしまう。
考えてみれば、私は、
「頑張る」か「力を抜く」か。
その二つしか知らなかったのかもしれません。
頑張って引き上げる。
疲れたら力を抜く。
でも、その間にある、
「必要なところは働いているけれど、必要以上には力まない」
という身体の状態を、当時の私は知らなかったのです。
力を抜いたら、身体は軽くなると思っていた
「力を抜けば身体が軽くなる」
私は、どこかでそう思っていました。
ところが、実際に全身をだらんとさせてみると、逆でした。
軸がなくなり、姿勢が悪くなり、身体が重く感じる。
これは、今考えてみても不思議な経験でした。
「余計な力を使わない」ということと、
「身体の支えをなくす」ということは、
どうやら同じではなかったのです。
バレエでは、立つ・回る・跳ぶ・片脚でバランスを取るなど、身体を絶えず調整する必要があります。
身体の姿勢や動きは、一つの筋肉だけで作られているわけではなく、さまざまな感覚情報や身体の部位が協調しながら調整されています。
だからといって、「筋肉に力を入れれば安定する」という単純な話でもありません。
私が昔やっていた「全部だらん」とは、少し違うものだったのだと思います。
そこから私は「引き上げ」を調べるようになった
「力を抜いて」と言われても分からない。
では、身体をどう支えればいいのだろう。
私は、そこから「引き上げ」について調べるようになりました。
でも、ここでも最初から答えが分かったわけではありません。
若い頃の私は、
「引き上げる=お腹を引き上げる」
と思っていました。
お腹を頑張って引き上げる。
それで身体を上に保とうとする。
けれど、身体について学んでいくにつれて、少しずつ私の中の「引き上げ」のイメージが変わっていきました。

私が意識するようになったのは、「お腹」だけではなく頭でした。
頭を、自分の力で持ち上げるのではありません。
今の私の感覚では、「頭を最も高い位置にすることを、ふわっと思う」
という感じです。
そして、
頭と坐骨が離れている。
さらに、
頭と足首あたりも離れている。
そんな感覚があります。
身体の上下が、それぞれ反対方向へ伸びていくような感じです。
「もっと上へ!」と力むわけではありません。
むしろ、ふわっと思う。
すると、私の場合は身体の中に少しずつ空間が生まれるような感覚がありました。


お腹は、頑張って引き上げなくても変わった
不思議だったのは、ここからです。
頭をふわっと高い位置に思い、頭と坐骨、頭と足首あたりが離れている感覚を持つ。
すると、
お腹を頑張って引き上げようとしなくても、お腹が自然に軽くえぐれるような感じがしたのです。
「お腹をこうしよう」と直接操作したわけではありません。
むしろ、お腹は後から自然にそうなった感じでした。
そして、以前よりプリエでもぐらつかなくなりました。
これは私にとって、とても大きな発見でした。
「引き上げる」ということは、必ずしも一か所を頑張って持ち上げることではないのかもしれない。
そう思うようになったのです。
私が感じる「身体の良い張り」
今の私は、身体にある程度の張りを感じます。
でも、それは昔のような「頑張っている張り」とは違います。
私の場合は、
背中もお腹も、どちらかだけではなく、バランスよく整っている感じ。
身体の前だけを固めるのでもない。
背中だけを意識するのでもない。
身体全体に、必要な張りがある。
私はこれを、自分なりに「身体の良い張り」と呼んでいます。
「力が抜けている」というより、
必要なところは働いているけれど、余計な力みが少ない。
そんな感覚に近いのかもしれません。

ここが、昔の私との一番大きな違いかもしれません。
今は、レッスンで「力を抜こう、抜こう」とはあまり考えません。
むしろ、
頭と坐骨が離れている。
頭と足首あたりが離れている。
そんな身体の方向を感じる。
すると、結果として余計な力が少なくなっているように感じます。
私にとっては、
「力を抜くこと」を直接やるのではなく、身体に必要なことをしていく。
その方が分かりやすくなってきました。
最近、アームスを学び直して感じたこと
そして最近、もう一つ面白い変化がありました。
私は以前から、自分のアームスは「これで合っているのかな」と思いながら使っていました。
特に気になっていたのが、アームスをすると肩が上がってしまうことです。
そこで、私は白井幸子先生に質問する機会があり、アームスについて学び直しました。
ここでは、先生の有料レッスンの具体的な内容を紹介することは控えたいと思います。
ただ、私自身の身体で起きた変化については、お話しできます。
アームスを腕だけの問題として考えるのではなく、
肩関節、鎖骨、肩甲骨など、腕全体の構造を意識する。
私自身は、上腕骨の動きと肘の方向、その先の鎖骨や肩甲骨との関係がつながっていくように感じています。
これは、あくまで今の私自身の身体感覚から考えていることです。
解剖学的に「これが正解」と断定しているわけではありません。
でも、私にとっては、このように身体のつながりを意図することで、
「腕を動かしている」というより、身体全体がつながって動いている
ように感じられるようになりました
最初は、アームスと頭の位置がどう関係するのか、私にも分かりませんでした。
でも、実際に自分の身体で試してみると、
腕の使い方を変える
↓
肩まわりが変わる
↓
身体のつながりを感じる
↓
頭がふんわり高く感じられる
という変化がありました。
そして、
頭と坐骨も、以前より感じやすくなりました。
これは、私の身体で起きたことです。
誰にでも同じことが起きるとは思っていません。
でも、身体は一つにつながっている。
腕を動かしているからといって、腕だけが動いているわけではない。
そんなことを、私は最近になって少しずつ実感しています。
「力を抜く」を、今も私は考えている
ここまで書いてきましたが、
「力を抜くとは、こういうことです」
と私は言い切ることはできません。
今も、自分の身体で考えながら試している途中だからです。
ただ、今の私が感じているのは、
気づかない緊張に気づいて、それを手放すこと。
そして、
必要なことをやっていくと、力みは減っていくのかもしれない。
ということです。
「力を抜いて」と言われたから、全部をだらんとさせる。
それでは、私の場合は身体が重くなりました。
反対に、頑張ってお腹を引き上げ続ける。
それも、今の私が求めているものとは違います。
頭と坐骨。
頭と足首。
背中とお腹。
そしてアームス。
身体の中にあるものを、一つずつ感じながら必要なことをしていく。
すると、余計な力を手放す余地が生まれてくる。
私は今、そんなふうに考えています。
大人になってからでも、身体の「分からない」は変わっていく
若い頃の私は、今ほど身体について調べたり、さまざまな情報に触れたりすることができませんでした。
何が正しいのかも、よく分かりませんでした。
先生から言われたことを一生懸命やる。
それでも分からない。
そんなこともたくさんありました。
でも今は、ありがたいことに、身体について学ぶ機会があります。
そして、身体のことを教えてくださる先生方とのご縁にも恵まれています
。
だからこそ、昔は分からなかったことを、今になって少しずつ自分の身体で確かめることができています。
もちろん、今でも分からないことはたくさんあります。
でも、
「分からないことがある=もう分かるようにはならない」
ではないのだと思います。
大人になってからでも、「そういうことだったの?」と、自分の身体で気づく瞬間がある。
それが、バレエを続ける楽しさの一つなのかもしれません。
「力を抜いて」と言われたあなたへ
もし今、
「力を抜いてと言われても、何をすればいいのか分からない」
と思っている方がいたら。
昔の私も、まったく同じでした。
そして私は、全身をだらんとさせてしまいました。
でも、それで身体が軽くなるとは限りませんでした。
だから今は、
「力を抜かなきゃ」
と急いで身体をゆるめるのではなく、
まず、自分の中にどんな緊張があるのかに気づいてみる。
そして、必要なところには必要な働きを与えてみる。
私なら、
頭をふんわり高い位置に思う。
頭と坐骨が離れている。
頭と足首あたりが離れている。
そんなところから、自分の身体を感じてみます。
これは、私にとっての方法です。
誰にでも同じように合うとは限りません。
でも、「力を抜く」という言葉が分からなかった私が、今ようやく少しずつ感じ始めていることがあります。
それは、
力を抜くことは、何もしないことではないのかもしれない。
ということ。
必要なことをしていく。
身体のつながりを感じる。
気づかない緊張に気づく。
そして、必要のなくなった力を少しずつ手放していく。
私は今も、その答えを自分の身体で探しています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


コメント