バレエのアームス、手首が小指側に折れるのはなぜ? 手首だけではない腕のつながり

バレエのアラセゴンと手首の尺屈、前腕の長軸と中指の方向の関係を解説するイラスト 身体の正解を探して

アラセゴンで腕を横に開いたとき、手首が小指側に折れてしまうことはありませんか?

手首をまっすぐにしようと意識しても、いつの間にか元の形に戻ってしまう。反対に、手首を直そうとすると、肘や肩まで固くなる。

そんな経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

私自身も、アームスの使い方を考えるなかで、手首が小指側に折れる癖に注目するようになりました。

そこで今回は、手首の動きを解剖学の視点から整理しながら、手首だけでなく、前腕・肘・上腕とのつながりにも目を向けてみます。

手首が小指側に折れる「尺屈」とは?

手首を小指側へ動かすことを、解剖学では「尺屈(しゃっくつ)」と呼びます。

手首には、小指側や親指側へ動かす動きのほか、手のひら側や手の甲側へ曲げる動きもあります。

尺屈そのものは、手首が本来持っている動きです。そのため、小指側に少し傾いているからといって、必ずしも悪いわけではありません。

一方、いつも同じ方向に手首が折れやすい場合は、自分がどのように手首を使っているのか、観察してみる価値がありそうです。

手首の形だけから、余計な力が入っていると断定することはできません。しかし、長年の習慣になっている動きは、自分では気づきにくいことがあります。

手首だけを直そうとすると、うまくいかないことも

手首が小指側に折れていると、つい手首だけをまっすぐに直そうとします。

ところが、手首を無理に固定すると、指や前腕に力が入ったり、肘や肩まで固くなったりすることがあります。

腕は、手首だけで動いているわけではありません。

前腕には橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)という2本の骨があり、手首や手の向きには、前腕の回旋や手首の関節の動きなどが関係しています。

さらに、肘や上腕、肩甲骨も腕の動きに関わっています。

そのため、手首の角度だけを直そうとするのではなく、前腕と手の向きの関係にも目を向けてみたいと思います。

前腕の長軸と中指の方向を観察してみる

ここで覚えておきたい言葉が「前腕の長軸」です。

前腕の長軸とは、肘から手首へ向かう、前腕の長さに沿った方向のことです。

手の甲側から観察するときは、前腕の中央を通るラインを目安にします。

そして、手の方向を観察するときには、中指の付け根につながる第3中手骨(だいさんちゅうしゅこつ)の方向を目安にしてみます。

前腕の長軸と中指につながる方向を見比べることで、手首が小指側や親指側へ偏りやすくなっていないか、気づくきっかけになります。

ただし、この2つの方向を、どんな姿勢でも完全に一直線にそろえることが正解というわけではありません。

大切なのは、理想の形を無理に作ることではなく、自分の手首がどのような位置を取りやすいのかを知ることです。

まずはテーブルで手首を観察してみよう

アラセゴンの形を作る前に、腕を支えた状態で手首を観察してみましょう。

やり方

1. 椅子に座り、前腕をテーブルに置きます。

2. 手のひらを下に向けます。このとき、前腕の甲側(背側)が上を向きます。

3. 手首が小指側に折れ込んでいないか、また、手首を力でまっすぐに固定していないかを観察します。

4. 前腕の長軸と、中指につながる方向を見比べてみます。

5. 手首だけを押し戻すのではなく、前腕と手の向きの関係をゆっくり見直してみます。

手首を無理にまっすぐにする必要はありません。

指を強く伸ばしたり、手のひらを固めたりせず、自然に動かせる範囲で試してみましょう。

肘や肩にも変化はある?

手首の向きに少し変化をつけたとき、肘や肩の感覚がどう変わるかも観察してみます。

もし手首をまっすぐにしようとした途端に、肘や肩が固くなるなら、手首だけを修正しようとしているのかもしれません。

反対に、前腕と手の向きを見直すことで腕全体を動かしやすく感じるなら、普段の使い方を見直すヒントになります。

これは筋肉の緊張を直接測定するものではありませんが、自分の動き方に気づくための練習になります。

痛みやしびれが出る場合は中止してください。

アラセゴンに戻って確かめてみる

テーブルで観察したら、実際にアラセゴンで腕を開いてみましょう。

手首をまっすぐに保つことだけに集中するのではなく、前腕の向きや手の方向にも目を向けます。

そのうえで、肘や上腕、肩がどのように動いているかを観察してみます。

私自身、アームスを考えるときには、手や手首だけでなく、腕全体のつながりを見ることが大切なのではないかと感じています。

また、手首の尺屈と同時に、上腕骨が内旋しているように見える場合も、腕全体の向きを観察する手がかりになります。

ただし、見た目だけで上腕骨の内旋が原因だとは断定できません。前腕の回旋や肩甲骨の位置なども関係するため、それぞれの動きを分けて考える必要があります。

バレエでは、ポジションや動きによって腕の向きも変わります。手首を常に同じ角度に固定することが目的ではありません。

形を直す前に、自分の使い方に気づく

長年続けてきた動き方は、自分にとって当たり前になっていることがあります。

だからこそ、形を直そうと頑張るだけでなく、まずは自分がどのように動いているのかを観察することも大切なのだと思います。

今回は、手首の尺屈をきっかけに、前腕の長軸と手の方向、そして肘や上腕との関係について考えてみました。

すぐに理想のアームスができるようになるわけではありません。それでも、自分の身体について新しいことを知ると、これまでとは違った見方ができるようになります。

手首だけを直すのではなく、腕全体のつながりにも目を向けてみる。

そんな小さな気づきが、アームスを見直すきっかけになればうれしいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。 

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