【50代からのバレエ:骨で踊る】

身体の正解を探して

​[50代からのバレエ:筋肉で頑張るのをやめたら、骨が私をバレリーナにしてくれた]

​​「肩を下げて!」「首を長く!」「骨盤を立てて!]

レッスン中、先生から飛んでくるアドバイス。

言われるたびに、私は一生懸命に体に力を込めてきました。

19歳でバレエに出会ってから、ずっと「頑張ること」が正解だと思っていたからです。​

でも、頑張れば頑張るほど、私の体は悲鳴を上げていました。

肩はギュッと上がり、骨盤は後ろに倒れ(後傾し)、呼吸はいつの間にか止まっている……。

鏡に映る自分のシルエットを見ては、「なんだかバレリーナとは程遠いな」と、こっそり溜息をつく日々でした。

​「頑張らなきゃ」が体を固めていた​なぜ、これほどまでに力んでしまうのか。

そこには「言葉」の不思議な力がありました。

​「もっと上手になりたい」「頑張らなきゃ!」そう心で唱えた瞬間、私たちの体は反射的にキュッと緊張してしまいます。

特に肩や首周りは、その言葉に反応して、まるで身を守るための「戦闘モード」のように固まってしまうのです。

向上心があるからこそ出てくる「頑張らなきゃ」という言葉が、実はバレエに必要な「しなやかさ」を遠ざけていた……。

そのことに気づいてから、私は言葉の使い方も変えることにしました。

​「支える」のは筋肉ではなく、骨の役目。

​50代になり、アレクサンダー・テクニクやボディマッピングを通して体の仕組みを学び直したとき、衝撃的な事実に出会いました。

それは、「体を支えるのは骨の役目であり、筋肉は動かすためにある」ということ。

​これまでの私は、家を建てるときに、柱(骨)を使わずに外壁(筋肉)だけで必死に屋根を支えようとしているような状態だったのです。

​重力を味方につける、骨の通り道​では、どうすれば「骨」で立てるのでしょうか。

それは、新しい技術を学ぶというよりは、本来の体の仕組みを「思い出す」感覚に近いものです。​

ポイントは、「関節のどこにも余計な力を入れない」こと。

股関節や膝はもちろんですが、一番大切なのが、頭と首がつながる場所、

「AO関節(環椎後頭関節)」です。

​鼻の奥、耳と耳の間あたりにあるこの小さな関節を、ガチッと固めずに、ふんわりと解いてあげます。

すると、上からかかってくる「重力」が、固まった筋肉に邪魔されることなく、すうっと背骨を通り、足の裏から床へと抜けていきます。

​床からのプレゼント、「床反力」を感じて​重力が床に抜けると、今度は床から「床反力」という、真上に押し返すエネルギーが返ってきます。

それは、「床からの、見えないプレゼント」のようなもの。

​足の裏から入ってきたエネルギーが、膝、股関節、背骨……と、関節の隙間を次々と通り抜けてきます。

そして最後に、ふんわりと緩めた「AO関節」を通り抜けて、頭のてっぺんが空へと届くように抜けていく。

​このとき、身体の内側(骨)は凛とした軸になり、身体の外側(筋肉)は、その軸に沿ってしなやかに、伸びやかに存在できるようになります。

​自然に変わるシルエット​「頑張らなきゃ」という呪文を解いて、重力と床反力、そして呼吸という「外からの力」と自分自身を調和させることを「思い出す」。

ただそれだけで、不思議な変化が起こりました。

​必死に下げようとしていた肩が、すとんと楽な位置に落ち着く。

後ろに倒れていた骨盤が、床からのエネルギーをもらったようにスッと立ち上がる。

​無理に形を作ろうとしなくても、シルエットが自然とバレリーナらしく整ってきたのです。

何より、あんなに苦しかったはずの動作が、今は驚くほど「楽」になりました。

​50代になり、若い頃のような無理はきかないけれど、今の私だからこそ気づける「体の正解」があります。

筋肉の鎧を脱いで、骨と床の力を信じてあげること。

​そんな軽やかな感覚を、これからも大切に綴っていきたいと思います。

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